ニコマートFT2
ニコマートFT2について 
 ニコン中級機の歴史はFM/FEの登場によって大きく区切る事が出来るでしょう。その旧世代のニコマートシリーズの末裔がFT2と言う事になります。実際にはFT3と言うのもあるのですが、殆ど見かける事はありませんねえ。
 去年(2003年)辺りから、じわりじわりと欲しくなったんですよねえ、ニコマート。以前は安いニコンを目にしても「なんだニコマートか。」位だったんですけど、カナダに住み始めた辺りかなあ、気になり始めたのは。FM/FEに比べたら垢抜けないデザインだし精密感も乏しいのですが、そこが板金と溶接で作られた様なかっこ良さを感じてしまったんですよねえ。実際にはニコマートはダイキャストで、FM/FEの方が板金で作られたって事を最近知ったのですが。
 欲しいと言っても当時失業中の管理人には必要性も無いカメラを買う余裕など到底御座いませんでした。それに結構良いお値段がするんですよねえ、露出計の壊れたFTnでも1万前後くらい。外装が綺麗だと2万位するFTnも見かけます。まあ、どうせ買うんなら就職後に余裕が出てきたら、良い物を2万位でと当面はその欲求を保留していたのですが、ふと寄った中古カメラ屋のジャンクコーナーに2台の黒いニコマートが転がっていたんですねえ。しかも値段は1000円と2000円。実はあっしはニコマートはそれ程詳しくなく、それが所謂がちゃがちゃを搭載したFTn以降のシリーズだと言う事以外は細かな事はわかりませんでした。よく見るとFT2と言う文字があります。黒のFT2、それだけで鼻血が出そうになった管理人は必死になって動作チェックでございます。外装は無残形容詞がつくほどの状態で、様々遺品と一緒に押入れに仕舞い込んであったのでと思わせるような、なにやらすえた様な妙な匂いがします。しかし、そんな事はどうでも良い。シャッターは流石機械式のコパル、双方とも大丈夫の様です。ファインダ内にでかいモルトの屑が鎮座していましたが、その辺のジャンクレンズを付けて見ると、金網越しの撮影と同じで目に近くに有る物は視界から消えてしまう為、それほども問題では有りませんでした。弄りまくっていると、どうやら2000円の方は時折レバーを2回巻き上げないとシャッターがチャージされない病気をもっている様で、1000円の方を奪取してまいりました。
 興奮の余り、帰路の西武新宿線内で袋から出してしまうのです。てっきりMR9とかややこしい電池を使うのかと思いきや、蓋を開けると錆だらけのMR44が出てきました。FT2以降のニコマートは馴染みのMR44を使うんですねえ、早速手持ちのカメラから電池を抜いて入れてみると、何と露出計が動きます、ブラボー!!こびり付いた汚れを布で拭いていくと、威厳が復帰して行く様で良い気分です。ペンタ部のゴムの様な汚れがどうしても取れないんだけど、これは何だろう?2万までの出費は覚悟していたのに、到底買えないと思っていた黒FT2を、こんなに速く手に入れる事が出来たなんて散々カナダで金をどぶに捨てる羽目になった管理人を、神が哀れに思ったのかもしれません。なんかあちこち微妙に線香臭い気がするし。

 ニコマートには、FM/FEの登場で合理化がなされ省略されたり改善された幾つかのポイントがあり、管理人の様に現役時代には生まれてもいなかったお調子者の気分を良くするギミックとなっています。シャッターボタンの他に設けられた金属のプレビューボタンや肩に置かれファンダーを覗かなくても確認できる露出計。ミラーアップを固定するレバーなどは円周魚眼や21mm等は絶対に手にする事が無いと解っていても伝説として心地良い物です。OMの様にマウント部に設置されたシャッターリングの由来はコパルのシャッターの都合による物らしいのですが、詳しい記述は文献に譲りましょう。そして、最も重要なギミックはやはりカニ爪を使用した露出計連動システム、所謂がちゃがちゃと言う事が出来るでしょう。ニコンのレンズに不思議と付いているカニ爪の存在理由を知ってから、何時かは使ってみたいと思っていましたが、実際手にしてみると煩雑で不便な物ですなあ。そこが堪らなく嬉しい訳ですけどね。
 実際に撮影に使うとなると一寸大型なんですが、やっぱりNewニッコール50mmF1.4と組み合わせると様になりますね。と言うかNewニッコールを勘違いで購入してから足がけ5年で本来の器に収まった事になります。ファインダ内には針式の露出計と現在のシャッタースピードが表示され凝った物です。当時としては標準なのかしらん?レバーを呼び角にするとシャッターロックが解除され、露出計のスイッチが入るのはFEと同様です。ところで露出計なんですが、室内のような光量の低い場所ではソコソコ正しい値を指すのですが、好天の屋外では日陰日向を問わず絶えず振り切ってしまい役に立ちません。どこかに露出計の感度を変える切り替えスイッチでもあるのかなあ?
 所で、海外ではニコンの一眼レフは非常に高く評価されているんですよねえ。比較対照としてはライカやローライと並ぶくらい。中古カメラ市場でもネット上は知らないけど、店頭やガレージセールではニコマートFTnでも2万前後位、FEにレンズでもついたら3万超えでも珍しくありません。その代わりフォクトレンダーやアグファのドイツ製中級機等は日本と比べると安い様ですねえ。なんだかこの価格差で一商売できるような気もしますけど・・・。

  
管理人などは無骨でカッコいいと思ってしまいますが、本カメラが現役時代にはFやF2に比べて存在の軽いカメラだったんでしょうねえ。
ペンタ部に大きな凹み、レバーの付け根には格納状態のレバーの痕がくっきり残っています。相当重い荷物を載せられたまま、どこかに押し込まれたんですかねえ。
底もぼこぼこでございます、何故か電池蓋の色が違いますねえ〜。フィルム感度はマウント下部で設定します。シャッターは丈夫なんですが、フレームに何かを塗った痕(?)があります。折角なので、輝かしい1000円の値札も貼ったままにしています。

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